探偵の調査中の裏話です。その2

探偵といえども人の子である。 どんなに探偵術を学んでもどうしようもないことが起こりうるのである。 そんな調査中の裏話を少しお話ししましょう。

尾行中のエレベーター

探偵個人によっても「鬼門」はいろいろあると思うが私にとっての「鬼門」はなんと言っても「尾行中のエレベーター」である。

かなり以前はエレベーターというとオフィスビルかデパートというのが定番であったが最近では複合商業施設やファッションビルなどが多く立ち並び、利用者の多くがエレベーターを利用している。 特に性別や専門分野などで分けられた商業ビルなども多く、特に女性専用の服飾雑貨から美容関係のサロンが入った複合施設などもある。 しかも都心では隣接する商業施設と階上で繋がっていたり、地下から駅に行けるなど1階出入口で張り込んでいればよいという訳にもいかない施設も数多くある。 尾行調査をしている最中にこのような大型商業施設などのエレベーターに乗られた場合、探偵も一緒に同乗しなければならない。 それこそどこに行かれるかまったく判らなくなってしまうからである。

エレベーターという狭い空間、殆ど人は乗ったら扉側に身体を向ける。 自分の顔と入ってきた人の顔が一瞬でも向き合う。 人が多少でもいれば良いのだがこの空間に対象者と2人っきりというケースもある。 時には対象者から声をかけられることもある。 「何階ですか?」と。 こんな事が1日に何度が続いてしまうともう最悪である。 その為にもチームを組んでの尾行調査である。

何しろ対象者と一緒に乗らなくては調査は先には進まない。 特に大型商業施設などでは一緒に乗れなければ見逃してしまったのと同じである。 まず何階で降りたのかもわからないではその大型商業施設全てを探し回らなければならず、しかも一度見て確認が取れなくてもその後にその場所に移動している事も考えられるからである。

それこそ運がよければ見つけることが出来ることがあると言っても過言ではない。 運が悪ければというケースもある。 相手に走り駆け込まれてしまったり、満員状態で乗れたのが相手だけであり、こちらが乗れないという状況にも出くわす。 長く尾行調査を経験しているとこんな不可抗力的な状況も経験する。

なんでエスカレーターではないんだ、エレベーターなんかこの世からなくなれ、と叫びたくなる一瞬である。

繁華街での張り込み

都会の繁華街には暴力団や反社会勢力関係者の事務所から違法カジノや詐欺グループなどの犯罪者の事務所などが多くある。 特に日本最大の繁華街である新宿歌舞伎町周辺の雑居ビルやマンションなどにはこういった関係者と思われる事務所がいくつもあると言われている。 しかも同じビルやマンションにいくつも入っている場合もある。

まったく反社会勢力や犯罪者と関係のない対象者が何かの都合でこのようなビルやマンションに入られると当然、そのビルやマンションの出入口が見えるところで張り込まなければなりません。 裏口もあれば両方に分かれて張り込みます。

すると対象者ではない人物も多く出入りしています。 しばらくすると反応してきます。 チンピラらしき人が遠めでこちらを見張るようにチラチラうろうろ。 こちらも張り込み場所をいろいろと移動しますがどうしても入ったビルの出入り口が確認できるところではなりません。 するとしびれを切らしたのか「さっきからこの変にいますがお兄さん達は何ですか?」と聞いてきます。 警察関係と間違えたのか、最初は丁寧に聞いてきます。 しかし、「知り合いを待っている」などと答えようなものなら警察と関係ないと判断したのか、突然、「目障りだからどけ」と威圧的に言ってくることがしばしば。

ここでいざこざは起こしたくないのだが余りにもしつこいと対応にも苦慮せざるを得ない。

ただ探偵であるとは絶対に言えないのである。 対象者とまったく関係がないとは言い切れないからである。 もし対象者が出てきた後に尾行するにしてもこういった人たちにも対象者を追っているとは気付かれないようにその場を立ち去らなければならない。

また時には警察が張り込んでいたりするケースもある。 するとすぐに飛んできてバッジを提示してうろうろしないで欲しいと言われてしまう。 ただこちらも仕事である以上、引くには引けない。 探偵という身分を明かしても納得してくれない。 むしろ警察の張り込みと重なってしまう方がたちが悪いケースもある。 なにしろ国家権力ほど強いものはないのである。

もしこの様な状況で対象者を見逃してしまうと結果的には全て探偵の対応が悪いと依頼人は捉えてしまうのである。 痛し返しである。